山家集をよむ(19)2024年07月21日 14:35

(181) 里馴るるたそがれどきの郭公聞かず顔にてまた名乗らせん

たそがれどき里に慣れて鳴かなくなったホトトギスに、まだ聞いていないふりをして、また名乗らせましょう

Hototogisu has gotten used to the village and stopped singing at the twilight hours. Let's pretend that we 

haven't heard it yet, and ask to introduce itself again.

里馴るる:山から出て里になれる。

聞かず顔:聞こえていないふり。

 

(182) 我が宿に花橘を植ゑてこそ山ほととぎす待つべかりけれ

庭に橘を植えてカッコウが来るのを待つべきでした

I should have planted a tree of flower orange in my garden and waited for Hototogisu to come.

橘:ホトトギスと橘は、詩歌や絵画によく用いられる組み合わせ。

 

(183) 尋ぬれば聞きがたきかと郭公今宵ばかりは待ちこころみん

歩き回っても鳴き声が聞こえないので、今夜はここでホトトギスを待ってみよう。

Let's try to wait here the Hototogisu for tonight, since we can't get the cry even if we walk around.

 

(184) 郭公待つ心のみ尽くさせて声をば惜しむ五月なりけり

5月になって、私はホトトギスが鳴くのを心待ちにしているのに、ホトトギスは鳴くのをためらっています

It's May and I'm eagerly awaiting Hototogisu to chirp, but it hesitates to cry.

 

    人に代わりて

(185) 待つ人の心を知らばほととぎすたのもしくてや夜をあかさまし

もしホトトギスが、鳴くのを待っている人の心を知っているのなら、私は一晩中でも起きて夜を明かすでしょう

If the hototogisu knows the heart of the person waiting for its song, I will stay up all night

人に代りて:代作

 

    郭公を待ちて空しく明けぬと云ふことを

(186) ほととぎす聞かで明けぬと告げ顔に待たれぬ鳥の音ぞ聞こゆなる

待ちもしなかった鳥たちが、ホトトギスの鳴き声もなく、夜明けを告げるかのように鳴き始めました

Birds, which I had not even waited for, began to sing to announce the dawn without the cry of Hototogisu.

音(ね)

 

(187) 郭公聞かで明けぬる夏の夜の浦島の子はまことなりけり

浦島太郎が(玉手箱を)開けたように夏の夜は、カッコーの声を聞かぬ間に明けてしまいました。

Just as Urashima Taro opened the treasure box, the summer night passed by before the cry of the cuckoo 

could be heard.

 

(188) ほととぎす聞かぬものゆゑ迷はまし花を尋ねぬ山路なりせば

花を尋ねて歩いた山路ではなかったので、きっとホトトギスの声を求めるうちに迷ったのだろう

It wasn't the mountain path I had walked on in search of flowers, so I must have gotten lost while searching for 

the voice of Hototogisu.

 

(189) 待つことは初音までかと思ひしに聞きふるされぬ郭公かな

待つのは初鳴きまでかと思っていたけれども、ホトトギスの鳴き声は聞きあきることがありません

I thought I would have to wait until the first cry, but I never stopped hearing the cries of the Hototogisu.

 

(190) 聞き送る心を具してほととぎす高間の山の峯越えぬなり

鳴き声を聞き送っていると、ホトトギスは私の心を掴んで高間山の頂上を飛び越えていきました。

As I was listening off the cry, Hototogisu grabbed my heart and flew over the top of Mt. Takama.

聞き送る:「見送る」からの造語と思われる。

高間の山:奈良県と大阪府の県境にある山。金剛山。



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大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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