山家集をよむ(17)2024年07月13日 14:52

(161) なほざりに焼き捨てし野の早蕨は折る人なくてほどろとやなる

焼け野原になった畑に生えた春のワラビは、 摘み取る人がいないので、穂がすっかり成長しました。

The ears of bracken that grew in the burnt-out fields in the spring have fully grown because there is no one to pick them.

 

(162) 沼水にしげる真菰のわかれぬを咲きて隔てたるかきつばたかな

沼にはマコモがたくさん繁っているけれど、カキツバタは花で見分けることができます

Although there are so many makomo in the swamp, the kakitubata can be told apart by its flowers.

沼水(ぬまみず)

真菰(まこも):イネ科の大形多年草。葉はカキツバタに似る。

 

(163) 岩伝ひ折らでつつじを手にぞ取る険しき山のとりどころには

険しい山の岩を伝うときは、ツツジを手折るのではなく手の支えにして登ります。

When climbing steep mountains along rocks, use azaleas as support instead of breaking them.

険しき(さがしき)

 

(164) つつじ咲く山の岩かげ夕映えて小倉はよその名のみなりけり

小倉山という山名にもかかわらず、岩陰に咲くツツジが夕日に映えています。

Despite the mountain's name, Mt. Ogura, the azaleas blooming in the shade of the rocks shine in the setting 

sun.

 

(165) 岸近み植ゑけん人ぞ恨めしき波におらるる山吹の花

花が波に洗われるほど岸の近くに山吹を植えた人が恨めしいです

I grudge the person who planted the Kerria so close to the shore that the flowers are washed by the waves.

 

(166) 山吹の花咲く里になりぬればここにも井出と思ほゆるかな

山吹の花が咲く里になったので、ここも井出かと思えます

It has become a village where Yamabuki flowers bloom, so I think this place is also Ide.

井出:山城国の地名。京都府綴喜(つづき)郡井手町井手。山吹の名所。

 

(167) 真菅生ふる山田に水をまかすればうれし顔にも鳴くかわづかな

菅が生えている山の田に水を引くと、カエルがうれしげに鳴きます

When water is poured into a mountain field where sedges grow, frogs croak happily.

真菅(ますげ):菅の美称。カヤツリグサ科スゲ属。大型のものは笠や蓑に用いられた。

 

(168) みさびゐて月も宿らぬ濁江にわれ住まんとてかはづ鳴くなり

月が水面に映らない濁って錆びた川に、私は生きていると主張するようにカエルが鳴いている。

Frogs are croaking as asserting that it lives in the river murky and rust where the moon is not reflected on the water.

みさびゐて:錆が浮いたような

濁江(にごりえ)

 

    春のうちに郭公を聞くと云うことを

(169) うれしとも思ひぞわかぬ郭公春聞くことのならひなければ

春にホトトギスの鳴き声を聞いても季節外れなとの思いが先だって、嬉しいとは思えません

Even when I hear the song of a cuckoo in spring, I can't help but feel that it's out of season, and I don't feel 

happy.

郭公(ほととぎす):以下同様。

 

  伊勢にまかりたりけるに、三津と申す所にて、海辺暮春と云うことを神主どもよみけるに

(170) 過ぐる春しほのみつより船出して波の花をや先にたつらん

過ぎてゆく春に三津の港から満潮を待って船出すれば、舳先に花のような白波がたつでしょう。

As spring passes, if you set sail from Mitsu Port at high tide, white waves like flowers will form at the bow.

しほのみつ:潮が満ちる

みつ:三津。伊勢にあった港



<< 2024/07 >>
01 02 03 04 05 06
07 08 09 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

このブログについて

大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

カテゴリ一覧

最近のコメント

最近のトラックバック

RSS