山家集をよむ(18) ― 2024年07月19日 14:56
三月、一日足らで暮れにけるによみける
(171) 春ゆゑにせめても物を思へとや三十日にだにも足らで暮れぬる
春なので物思いにふけっていましたが、30日を数えずに3月が終わってしまいました。
I was lost in thought because it was spring, but March ended without counting the 30th.
一日(ひとひ)足らで:旧暦のひと月には大月30日と小月29日があり、年によって入れ替わるため30日がない月もある。
三十日(みそか)
(172) 今日のみと思へばながき春の日も程なく暮るる心地こそすれ
春の日は今日で終わりだと思うと、長い春の一日もすぐに終わるような気がします。
When I think that the spring day is only
for today, I feel like that the long day of spring will end soon.
(173) ゆく春を留めかねぬる夕暮れは曙よりもあはれなりけり
留まることなく過ぎ去っていく春の夕暮は、曙よりも深い趣があります
The spring evening that passes without
stopping has a deeper charm than the dawn.
(174) 限りあれば衣ばかりはぬぎかへて心は花を慕ふなりけり
季節も進んできたので着物は衣替えしましたが、心は今も花を慕っています。
As the season has progressed, I have changed my kimono, but my
heart still yearns for flowers.
(175) 草しげる道刈りあけて山里は花見し人の心をぞ見る
繁った草を刈って道を開けると、花を見るために山里に通った人の心を見る思いがします
When I clear the path by mowing the growing grass, I feel like I can see the hearts of people who visit
mountain villages
to see the flowers.
(176) 立田川岸の籬を見わたせば井堰の波にまがふ卯の花
立田川の土手を眺めると、塀のウツギの花が堰の波のように見えます。
When I look over the banks of the Tatsuta River, flowers of Unohana on the fence is seen like the waves of
weir.
籬(まがき):木枝や竹を格子状に組んだ垣。
井堰(いせき):川から水を引くために流れを堰き止める施設。
(177) まがふべき月なき頃の卯の花は夜さへさらす布かとぞ見る
月明りと見まがう卯の花ですが、月明りもない夜には、夜に晒す布かと見間違えます
Flowers of Unohana can be mistaken for moonlight, but on nights when there is no moonlight, it can be
mistaken for
cloth exposed at night.
(178) 神垣の辺りに咲くも便りあれや木綿かけたりと見ゆる卯の花
三室神社の塀に掛けられた由布のような卯の花について、何か便りをお持ちでしょうか?
Do you have any news about the unohana
that look like the cloth of yufu hanging on the wall of Mimuro
Shrine?
神垣(かみがき):神が鎮座する所。地名の「みむろの山」にかかる。
木綿(ゆふ):楮(こうぞ)のこと。また、それを原料とした布。
無言なりける頃、郭公の初声を聞きて
(179) 郭公人に語らぬ折りにしも初音聞くこそかひなかりけれ
ホトットギスの初音を聞きましたが、「無言の業」の最中だったので、人に語ることもできず、むなしいことです
Although I heard the cry of Hototogisu
first time in this year, but unfortunately I was practicing silent deed so I
couldn't tell it anyone.
無言:ある期間無言を通す仏道修行。
郭公(ほととぎす)
初音:誰よりも先に初音を聞き、人にそれを語るのを喜びとした。
尋ねざるに郭公を聞くと云うことを、賀茂社にて人々よみけるに
(180) ほととぎす卯月の忌に忌籠るを思ひ知りても来鳴くなるかな
私が卯月の忌で引きこもっているのを知っていたのに、ホトトギスが来て鳴きました。
Hototogisu
came and chirped, even though it knew that I shut myself due to the mourning of
Uzuki.
卯月の忌(うづきのいみ):賀茂祭の前に身を清めること。
忌籠る(いこもる)
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