山家集をよむ(3)2024年03月10日 15:20

(21) 若菜摘む野辺の霞ぞあはれなる昔を遠く隔つと思へば

若菜を摘む野辺が霞に覆われる時、遠い昔を思い出す。

When the field where I pick young greens is covered in mist, I remember the distant past.

 

(22) 卯杖つき七草にこそ老いにけれ年を重ねて摘める若菜に

年を重ねて、卯杖をついて七草を摘むほどに老いましょう

Let's grow old until we pick seven herbs with a cane.

 

(23) 若菜生ふる春の野守に我なりて憂き世を人に摘み知らせばや

若菜が育つ春の野の番人のように、世の憂きを人々に知らせることができたなら

If only I could let people know about the sorrows of the world, like a guardian of the spring green fields.

 

(24) 憂き身にて聞くも惜しきは鶯の霞にむせぶあけぼのの声

鶯の朝の霞にむせぶ声を、こんな憂き身で聞くのは惜しいことです

It's a shame to listen to uguisu's voice choking in the morning mist with such sadness.

 

(25) 鶯の声ぞ霞に漏れてくる人目ともしき春の山里

春の山里では人知れずウグイスの声が靄の中から漏れてきます

In the mountain village in spring, the voice of uguisu  leaks out from the mist.

 

雨中の鶯

(26) 鶯の春さめざめと鳴きゐたる竹の雫や涙なるらん

鶯は春雨の中さえずっている、竹の雫は涙だろうか

An uguisu sing in the spring rain; are the bamboo drops tears?

 

(27) 古巣うとく谷の鶯なりはてば我やかはりてなかんとすらん

古い巣が空になり谷の鶯が鳴き止めば、代って私は鳴くだろうか

When the old nest is empty and the uguisu  in the valley stops singing, will I cry in their place?

 

(28) 鶯は谷の古巣を出でぬともわがゆくへをば忘れざらなん

ウグイスは谷の古巣を出ることはなくても、私のゆくえを忘れることはないでしょう

Even if the uguisu never leaves its old nest in the valley, it will never forget where I went.

 

(29) 鶯は我を巣守にたのみてや谷の岡辺は出でてなくらむ

鶯は私に巣守を頼んだのだろうか、谷辺を出て鳴いています

I wonder if the uguisu asked me to guard its nest, as it comes out of the valley and sings.

 

(30) 春のほどはわが住む庵の友に成りて古巣な出でそ谷の鶯

春になると私の住む庵の友となる谷の鶯よ古巣から出ていかないでくれ

The uguisu that sings around my hermitage in the spring, please do not leave from your old nest in the valley.

 



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このブログについて

大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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