山家集をよむ(10)2024年04月17日 10:18

(91) 花の色や声に染むらん鶯の鳴く音ことなる春のあけぼの

鶯の声に花の色が染まったのだろうか、鳴き声が格別に聞こえる春の曙は

I wonder if the flowers have dyed the voice of the warbler, and their songs are enchanting in particular at the 

dawn of spring.

 

    春は花を友と云う事を、清和院の斎院にて人々よみけるに

(92) おのづから花なき年の春もあらば何につけてか日を暮らすべき

時には花のない春があるとしたら、私たちは何を頼りに日々を生きていけばいいのでしょうか?

If sometimes there were springs without flowers, what should we rely on to live our days?

おのづから:偶然、たまたま、まれに

 

(93) 思ひ出に何をかせましこの春の花待ちつけぬわが身なりせば

この春の開花を待てない身であるとしたら、この世の思い出に私は何をすればいいのだろうか

If I can't wait for this spring to bloom, what should I do with the memories of this world?

 

(94) わきて見ん老木は花もあはれなり今いくたびか春にあふべき

趣のある花を咲かせる古木を、これから何度春を迎えるのだろうかと思いながら、じっくり見ましょう

Please take a close look at the old trees that bloom with quaint flowers and wonder how many springs will come on the tree in the future.

わきて見ん:とりわけ心して見よう

老木(おいき)

 

(95) 木のもとは見る人しげし桜花よそにながめて香をば惜しまん

桜の木のすぐそばには見る人がひしめいています、離れて見て香りを楽しみましょう

There are many people watching right under the cherry blossom tree, so let's stand back and enjoy the scent.

 

(96) 吉野山ほきぢ伝ひに尋ね入りて花見し春はひと昔かも

春に桜を見るために険しい道を歩いて吉野山に分けいったのはもうひと昔も前のことでしょうか。

It must have been a long time ago that I walked the steep path in Mt. Yoshino to see the cherry blossoms in 

spring.

ほきぢ:険しい崖路

 

   修行し侍りけるに、花のおもしろかりける所にて

(97) ながむるに花の名立の身ならずはこの里にてや春を暮らさん

私のような修行僧が花を見るなんて僭越だと花が思わない限り、私は春の間この里に住みたいと思っています。

As long as the flowers don't think it's presumptuous for a monk like me to see them, I would like to live in this 

village during the spring.

名立(なたて):評判、悪評、名折れ

 

(98) 待ち来つる八上の桜咲きにけりあらくおろすな三栖の山風

期待してやってきた八上の桜が咲いた。激しく吹かないでおくれ三栖山の風

The cherry blossoms in Yagami that I had come to expect have bloomed. Don't blow too hard, the wind of 

Mt. Misu.

 

清和院の花盛りなりける頃、俊高のもとよりいひ送れりける

(99) おのづから来る人あらばもろともにながめまほしき山桜かな

自らやって来る人があれば、山桜を一緒に眺めたいものです

If there are people who come by themselves, I would like to look at the wild cherry blossoms together.

俊高(としたか):右兵衛佐・源能賢(としかた)男。源能賢は藤原道長時代の高官。

 

    返し 

(100) ながむてふ数に入るべき身なりせば君が宿にて春は経ぬべし

花見の宴の数に入るべき高貴な身分であるなら、私は貴方の宿で春を過ごすでしょう

If I am of such a noble status as to be included in the number of cherry blossom viewing parties, I will spend the spring at your inn.



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大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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