山家集をよむ(2)2024年03月06日 14:06

(11) 霞まずは何をか春と思はましまだ雪消えぬみよしのの山

霞んでいなければ、春とは思えない「みよしの」の山はまだ雪が消えない

It wouldn't be spring if it wasn't hazy. The snow still hasn't disappeared on the mountains of Miyoshino.

 

(12) 藻塩焼く浦のあたりは立ち退かで煙立ち添ふ春霞かな

藻塩を焼く海岸のあたりは煙が立ち込めている あれは春霞でしょうか

There is smoke around the coast where seaweed is boiled. Is that a spring haze?

 

 

(13) 浪越すと二見の松の見えつるは梢にかかる霞なりけり

二見の松を波が越すと見えたのは梢にかかる霞でした

When the waves passed over the Futami pine trees, all I saw was mist hanging over the treetops.

 

(14) 春ごとに野辺の小松を引く人は幾らの千代を経べきなるらん

春ごとに野に生うる小松を抜く人は、幾らの世代を経ることだろうか

How many thousands of generations do people pull out small pine trees in the fields every spring?

経(ふ):経る

 

(15) 子日(ねのひ)する人に霞は先立ちて小松が原をたなびきてけり

小松が生うる原を漂う霞に導かれて、人々は子日の遊びをします

Through the field where small pines grow the mist wafts guiding people play around on Nenohi.

 

(16) 子日しに霞たなびく野辺に出でて初鶯の声を聞きつる

子日を祝って霞のかかる野原に出ると、初うぐいすの声が聞こえてきます。

I went out to the mist-covered field to celebrate the Nenohi and listened to the voice of the first Uguisu.

 

(17) 若菜摘む今日に初子のあひぬれば松にや人の心惹くらん

今日は若菜を摘む日だけど、初子(はつね)の日でもあるので、松に心が引かれるだろう

Today is the day to pick young greens, but it's also Hatsune's day, so your heart will be drawn to the pine tree.

 

(18) 今日はただ思ひもよらで帰りなむ雪積む野辺の若菜なりけり

野辺には雪が積もり若菜を見ることもかなわない。今日は思いをかけることもなく家に帰りましょう

Snow piles up on the fields, making it impossible to pick young greens. I will go home without worrying about 

anything today.

 

(19) 春日野は年の内には雪積みて春は若菜の生ふるなりけり

春日野は年の内に雪が積もるけれど、春には若緑が咲き乱れるでしょう

In Kasugano, snow is piled up within the year, and in spring, young greens are in full bloom.

 

(20) 春雨の布留野の若菜生ひぬらし濡れ濡れ摘まん筐たぬきれ

春雨が降る(布留)野にぬれて生えている若菜を摘もう、手も函も濡れて

When spring rain falls, I pick the young greens growing wet in the field, and my hands and the box to put the 

young greens are wet.

布留(ふる):奈良県天理市の地名。「降る」と掛けている。

筐(かたみ):(若菜を入れる)箱

 



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このブログについて

大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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