山家集をよむ(1)2024年03月02日 19:43

立つ春の朝よみける

(1) 年くれぬ春来べしとは思ひ寝にまさしく見えてかなふ初夢

朝が明けたら春になるかなと思いながら寝ると、初夢で見たとおり春になっていました

When I went to bed wondering if it would be spring when the morning dawned, it turned out to be spring, just like I had seen in my first dream.

立つ春:立春

年くれぬ:立春の前日(節分)を意味する

 

(2) 山の端の霞むけしきにしるきかな今朝よりやさは春の曙

山入端の霞がかった景色を見てやさしい春の曙が来たのを知りました

When I see the misty scenery at the edge of the mountain, I know that the gentle dawn of spring has come.

しるき:はっきりしている

やさ:姿かたちが上品ですっきりしている。または、住居のこと。

 

(3) 春立つと思ひもあへぬ朝出でにいつしか霞む音羽山かな

出立した朝は春はまだと思ったのに音羽山はいつのまにか春霞に包まれている

The morning I left, I thought spring had not yet arrived, but before I knew it, Mt. Otowa was enveloped in a haze of spring.

 

(4) たちかはる春を知れとも見せ顔に年を隔つる霞なりけり

春はうつり変わるものと知ってはいるが、目に映る人々の顔には霞のように年月が過ぎていく。

I know that spring changes, but the years pass like a haze on the faces of the people I see.

We know that spring will pass, and also know the years pass like a haze on people's faces.

たちかはる:移り変わる

 

(5) 門ごとに立つる小松に飾られて宿てふ宿に春は来にけり

門に小松が飾られた宿々に春が来た

Spring has come to the inns decorated with pine branches at each gate.

 

(6) 子日して立てたる松に植えそへん千代重ぬべき年のしるしに

子日遊びの松に植え添えよう千代を重ねる御代のしるしに。

Let's plant it by the pine tree of "Nenohi", as a sign of the thousands of generations.

子日(ねのひ):その年の初の子の日に小松を抜いて遊ぶ宮中行事。

 

(7) 山里は霞みわたれるけしきにて空にや春の立つを知るらん

山間の村々は霞がかかったように美しく、空は春の訪れを知っているだろう

The mountain villages are in a hazy state of beauty, and the sky knows when spring has come.

 

難波わたりに年越しに侍りけるに、春立つ心をよみける

(8) いつしかと春来にけりと津の国の難波の浦を霞こめたり

春の日、津の国難波の浦はいつの間にか霧に包まれていました

Before I knew it, a mist filled the Naniwa bay of Tsunokuni on a spring day.

 

春になりける方違へに、志賀の里へまかりける人に具してまかりけるに、逢坂山の霞みけるを見て

(9) わきて今日逢坂山の霞めるはたち遅れたる春や越ゆらん

逢坂山は今日はとりわけ霞に覆われ、遅かった春の到来です

Mt. Osaka is especially covered in mist today, indicating the late arrival of spring.

わきて:とりわけ

 

(10) 春知れと谷の細水漏りぞ来る岩間の氷ひま絶えにけり

渓谷の岩間の氷は春を知り細水が漏れ出ています

The ice between the rocks in the valley knows it's spring and a small stream of water is leaking out.

 



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このブログについて

大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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