山家集をよむ(30) ― 2024年09月24日 20:24
(291) なにごとをいかに思ふとなけれども袂かわかぬ秋の夕暮れ
何を思うということもないのだけれど私の袂は濡れたままの秋の夜です
I don't have any particular thoughts, but
my sleeves are still wet on this autumn evening.
(292) なにとなくもの悲しくぞ見えわたる鳥羽田の面の秋の夕暮れ
なぜだか分かりませんが、一面に広がる鳥羽の田の秋の夕暮れは物悲しく見えます
I don't know why, but the autumn evening
over the fields of Toba looks sad.
鳥羽:京都市南区とその周辺
(293) 寝覚めつつ長き夜かなと磐余野に幾秋さてもわが身経ぬらん
磐余野に長い秋の夜を寝覚めつつすごしていると過ぎ去ったいくつもの秋のことがしみじみ思い出されます
As I lie awake through the long autumn
nights in Iwareno, I am reminded of many autumns that have passed.
磐余野(いはれの):やまと国の枕詞
(294) おほかたの露には何のなるならん袂におくは涙なりけり
おおかたの露は何が元なのでしょうか。袂の露は私の涙です
What is the source of most dew? The dew on
my sleeves are my tears.
(295) 山里の外面の岡の高き木にそぞろがましき秋蝉の声
山間の村の外れの丘の高い木で落ち着きなく鳴く秋の蝉
Autumn cicadas chirp restlessly in the
trees high on the hills outside a mountain village.
外面(そとも):家の外
そぞろがましい:落ち着きなく
(296) 玉に貫く露はこぼれて武蔵野の草の葉むすぶ秋の初風
宝玉を繋いだような露をこぼして武蔵野の秋の初風が草の葉を揺らしています
The first autumn wind in Musashino
rustles the grass leaves, shedding jewel-like dew.
貫く(ぬく)
(297) 穂に出でて篠の小薄招く野にたはれて立てる女郎花かな
オミナエシは、穂を出した若い薄を招くように野に戯れて立っています
The ominaeshi stands in a field, frolicking
and inviting the young grass that has just sprouted.
穂に出でて:花穂が出て(恋心を暗示)
篠の小薄:まだ穂の出ない薄(「を」は男を暗示)
たはれて:戯れて
(298) 花をこそ野辺の物とは見に来つれ暮るれば虫の音をも聞きけり
野辺といえば花を見に来ますが、日が沈むと虫の鳴き声も聞こえてきます
When we think of the fields, the flowers we come to see, but when the sun goes down, we also come to hear
the insects.
(299) 荻の葉を吹き過ぎて行く風の音に心乱るる秋の夕暮れ
The sound of the wind blowing through the
reed leaves stirs the soul on an autumn evening.
(300) はれやらぬ深山の霧のたえだえにほのかに鹿の声きこゆなり
深い山の晴れそうもない霧の中で、時折かすかな鹿の鳴き声が聞こえます。
In the deep mountain fog that never seems
to clear, the faint sounds of deer can occasionally be heard.
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