山家集をよむ(4)2024年03月13日 15:58

(31) 萌え出づる若菜あさると聞こゆなり雉子鳴く野の春の曙

春の野の曙に、芽吹いた若草をついばんでキジが鳴いています

At dawn in the spring field, a pheasant is chirping as it pecks at the sprouted young grass.

雉子(きぎす):雉(きじ)の古名

 

(32) 生ひかはる春の若草待ちわびて原の枯れ野に雉子鳴くなり

キジは春の若草が生き返るのを待ちかねて枯れ野の原で鳴いています

Pheasants are chirping in the dry fields, impatiently waiting for the spring grass to come back to life.

 

(33) 春霞家たち出でて行きにけん雉子たつ野を焼きてけるかな

雉が住む野原を焼いています、そのため春霞の中を雉は家を出て行っただろう

They are burning the fields where the pheasants live, so the pheasants must have left their homes in the spring haze.

 

(34) 片岡にしば移りして鳴く雉子たつ羽音とて高からぬかは

片岡にしばしば移動して鳴く雉の羽音も高くないことはありません

The pheasants often fly on the hillside and the sounds of their wings are not calm.

 

(35) 香をとめん人をこそ待て山里の垣根の梅の散らぬかぎりは

山里の塀の梅の花が散らない限り香りをもとめてくる人を待ちましょう

As long as the plum blossoms on the hedge of the mountain village do not fall, I will wait for people to come and smell the scent.

とめる:求める

 

(36) 心せん賤が垣根の梅はあやなよしなく過ぐる人とどめけり

粗末な垣根の梅は、何の故にか通り過ぎる人をとどめていると心しよう

Let's keep in mind that for some reason, the plum trees in the rough hedges are stopping people 

from passing by.

賤(しず):卑しいこと

 

(37) この春は賤が垣根に触ればひて梅が香とめん人親しまん

この春は、しき垣根にふれて梅の花の香りに親しむ人がいるでしょう

This spring, some people will touch the humble hedges and enjoy the scent of plum blossoms.

 

(38) 主いかに風わたるとていとふらんよそにうれしき梅の匂いを

梅の匂が他所に流れるので、家の主はさぞかし風が吹くのを厭うことだろう

The owner of the house probably hates the wind blowing because the scent of plums spreads elsewhere.

主:家主のこと


(39) 梅が香を谷ふところに吹きためて入り来ん人に()めよ春風

春風が渓谷を梅の香りで満たし、訪れる人を梅の香りに包みます

The spring breeze fills the valley with the scent of plum blossoms, bathing visitors in their scent.

 

      伊勢にもりやまと申す所に侍りけるに、庵に梅の香ばしく匂いひけるを

(40) 柴の庵にとくとく梅の匂ひきてやさしきかたもあるすみかかな

小枝で編んだ粗末な小屋ですが、早くも梅の香りが漂い風情があります。

Although it is a modest hut made of twigs, the scent of plum blossoms already wafts through the air, giving it an air of elegance.



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大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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