山家集をよむ(35)2024年12月03日 19:38

(351) 夜もすがら月こそ袖に宿りけれ昔の秋を思ひ出づれば

夜もすがら月を見ながら昔を思い出して袖の陰で涙にくれました

As I gazed at the moon all night, I remembered the past and cried under my sleeve.

 

(352) ながむればほかの影こそゆかしけれ変わらじものを秋の夜の月

秋の夜の月はどこで見ても変らないものですが、眺めていると他所で見る月をゆかしと思ってしまいます

The moon on an autumn night looks the same no matter where you see it, but when I look at it, I can't help 

but think that the moon I saw in other places was more beautiful.

 

(353) ゆくへなく月に心のすみすみて果てはいかにかならんとすらん

月を見て心はどこまでも澄んでゆく果てはどうなっていくのだろう

Looking at the moon, my heart becomes clearer and clearer. I wonder what will happen at the end.

 

(354) 月影のかたぶく山をながめつつ惜しむしるしや有明の空

月が山の端に沈むのを惜しんで眺めているとその甲斐あって、月と共に夜明けを迎えました

I watched with regret as the moon sank behind the mountain, and it was worth it, as dawn broke with the moon.

 

(355) ながむるもまことしからぬ心地して世にあまりたる月の影かな

ながめていると現実のものではないような心地がするこの世のものではないような月の影です

When I look at the moon, I feel like it's not real, it's like an otherworldly shadow of the moon.

 

(356) 行末の月をば知らず過ぎ来つる秋またかかる影はなかりき

未来の月のことは知りませんが、過ぎ来たった秋にはこのような月影はなかった

I don't know about the moon in the future, but there was no moon like this in the autumn that has passed.

行末(ゆくすゑ)

 

(357) まこととも誰か思はんひとり見て後に今宵の月を語らば

今夜一人で眺めて、後にこの月のことを誰かに話したら、それが本当だと信じてもらえないかもしれません

If I look at the moon tonight alone and later tell someone about it, they might not believe it's true.

 

(358) 月のため昼と思ふがかひなきにしばし曇りて夜をしらせよ

あまりに月が明るくて夜を待ったかいがない。しばし曇って夜の暗さを知らせてほしい

Because the moon is too bright, it is not worth for waiting for the night. I want it to be cloudy for a while and 

see how dark the night is.

 

(359) 天の原朝日山より出づればや月の光の昼にまがえる

昼かとまがうほどに明るい月は天の朝日山から出たのでしょうか

The moon was so bright that I thought it was daytime. Was it rising from Mount Asahi in the sky?

 

(360) 有明の月の頃にしなりぬれば秋は夜なき心地こそすれ

夜明け前に満月が西の空に見えるころになると、夜を通して月明かりで秋は夜がないような心地さえします

When the full moon appears in the western sky before dawn, the moonlight shines throughout the night, making it feel as if there is no night in autumn.



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このブログについて

大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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