山家集をよむ(31)2024年09月26日 19:08

(301) かねてより梢の色を思ふかな時雨はじむる()山辺(やまべ)の里

かねてより梢のもみじはまだかと思っていたところ、時雨はじめたので深い山辺の里の紅葉が始まるだろう

I had been wondering when the maples would turn red, but now that it has started to rain, I think the leaves in 

the deep mountain villages will start to turn red.

 

(302) 鹿の音を垣根にこめて聞くのみか月もすみけり秋の山里

秋の山里では、垣根の内に鹿の音を聞くだけではなく月の澄んだ光も照らします

In the autumn mountain village, not only can you hear the deer among the fences, but the clear light of the 

moon shines upon you.

 

(303) (いほ)()る月の影こそさびしけれ山田は引板(ひた)音ばかりして

庵に漏れる月の光こそ寂しゅうございます。山の田の鳴子の音ばかりが聞こえてきて。

The moonlight filtering into the hermitage is truly lonely. All I can hear is the clapping of the rattles in the rice 

fields in the mountains.

引板:鳴子

 

(304) わづかなる庭の小草(こぐさ)の白露をもとめて宿る秋の夜の月

秋の夜の月が庭の小さな草の露の中に見えます。

The moon of an autumn night is seen in the dew on a few little grasses in the garden.

 

(305) なにとかく心をさへはつくすらんわが歎きにて暮るる秋かは

なぜこんなに深い思いがするのだろう。私の悲しみによって秋が深まるのでしょうか。

Why do I feel so deeply? Is autumn deepening because of my sadness?

 

(306) 秋の夜の空に出づてふ名のみして影ほのかなる(ゆふ)月夜(づくよ)かな

秋の夜といえば中秋の名月ですが、この夜はほのかな月明かりです。

It is thought of the harvest moon on autumn nights, but this evening is with a faint moonlight.

 

(307) 天の原月たけのぼる雲路をばわきても風の吹きはらはなん

天の原を月が高く登ります。月の路の雲をばとくに風に吹きはらってほしい

The moon is rising high in the sky. I wish the wind would blow away the clouds in the moon's path.

 

(308) うれしとや待つ人ごとに思ふらん山の端出づる秋の夜の月

秋の夜、山の端から昇る月は、月を待つ人々と同じくらい幸せな気分になるでしょう。

The moon rising from the edge of the mountain on an autumn night will feel as happy as people who wait for 

the moon.

 

 

(309) なかなかに心つくすも苦しきに曇らば入りね秋の夜の月

晴れるかどうかなんて気にするより、曇ってたら秋の夜の月を山の向こうに隠してしまおう

Rather than worrying about whether it will be clear or not, if it is cloudy, let's just put the autumn night moon 

behind the mountains.

 

(310) いかばかりうれしからまし秋の夜の月すむ空に雲なかりせば

秋の夜、雲ひとつない空に月が見えたらどんなに幸せだろう

How happy I would be if the moon appeared on the cloudless sky on an autumn night.



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このブログについて

大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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