山家集をよむ(15)2024年06月27日 20:27

(141) 梢打つ雨にしほれて散る花の惜しき心を何にたとへん

梢を打つ雨に濡れて散る花の惜しむ心を何に喩えたらいいでしょうか?

To what can be compared the regrettable heart of falling flowers, wet from the rain hitting the treetops?

 

(142) 吉野山ひとむら見ゆる白雲は咲き遅れたる桜なるべし

吉野山の向こうに白い雲が集まっているのは遅咲きの桜でしょう

The white clouds gathering beyond Mt. Yoshino are probably late-blooming cherry blossoms.

 

(143) 吉野山人に心をつけ顔に花よりさきにかかる白雲

吉野山は開花は近いと人に期待をもたせる様子なのに、花よりさきに白雲がかかりました

Mt. Yoshino seems to be promising that the flowers will bloom soon, but white clouds appear before the 

blooming.

 

(144) 山寒み花咲くべくもなかりけりあまりかねてもたづね来にける

山はまだ寒く花が咲くこともないでしょうが、花を見たさに来てしまいました

It's still cold in the mountains and the flowers probably won't bloom, but I came here just to see them.

山寒み:山はまだ寒いので

 

(145) かたばかりつぼむと花を思ふよりそそまた心ものになるらん

少しばかり蕾が出てるかなと花のことを思うとまた心は花のことでいっぱいになるでしょう

My heart will be filled with thoughts of flowers, when I just wonder if a few buds have appeared.

かたばかり:ほんの少し

 

(146) おぼつかな谷は桜のいかならん峰にはいまだかけぬ白雲

気がかりな谷の桜はどうなっているのでしょう、峰にはいまだに白雲(桜)がかからないけれど

I'm worried about what's going on with the cherry blossoms in the valley, although there are still no white clouds (cherry blossoms) covering the peaks.

 

(147) 花と聞くは誰もさこそはうれしけれ思ひしづめぬわが心かな

花の便りを聞くと誰もがさぞうれしいことだろうけれど、思いをしづめることができない私の心は

I'm sure everyone would be very happy to hear the news about the flowers, but my heart can't calm down.

 

(148) 初花のひらけはじむる梢よりそばへて風のわたるなりけり

花が咲き始めた梢から軽やかに風が吹いてきます

A light breeze blows from the treetops where flowers have begun to bloom.

そばへ:戯へ。たわむれる。日照雨(そばえ)。空のごく一部分からだけ降る雨。日照があるのに降る雨。キツネの嫁入り。

 

(149) おぼつかな春は心の花にのみいづれの年かうかれ初めけん

いつの年からかよくわかりませんが、春になると花のことだけを考えて心がウキウキします

I'm not sure which year it started, but when spring comes, I get excited just thinking about flowers.

 

(150) いざ今年散れと桜を語らはんなかなかさらば風や惜しむと

今年はもう散ってよいと私が桜に言えば、かえって風は花を惜しんで強く吹かないのじゃないかな

If I tell the cherry blossoms that they can scatter this year, the wind will probably spare the flowers and not 

blow as hard.



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このブログについて

大阪の高校を退職して、2011年東日本大震災の直後に山梨県小淵沢に移住しました。物理の教員歴33年の間に、地震の話や原子力の話はしたものの、防災教育をやってなかったことを痛感して、以後、防災教育に関する活動を継続しています。
これまでCCnetのブログ(「一鴨日記」)に投稿していましたが、編集機能の問題があって「アサブロ」に引っ越しました。2022年8月31日以前の投稿記事については、旧「一鴨日記」を御覧ください。

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