山家集をよむ(48) ― 2026年02月22日 20:02
(481) 思はずによしある賤のすみかかな蔦の紅葉を軒に這はせて
蔦の紅葉を軒に這わせた貧しい住処が思いがけず趣があります
The poor dwelling, with its ivy leaves
growing on its eaves, is unexpectedly charming.
賤(しづ)
東へまかりけるに、信夫の奥に侍りける社の紅葉を
(482) 常盤なる松の緑に神さびて紅葉ぞ秋は朱の玉垣
常緑の松に囲まれて神々しい社は秋には紅葉の玉垣に囲まれます
The sacred shrine is surrounded by
evergreen pines and in autumn is surrounded by a fence of red leaves.
信夫(しのぶ):陸奥国信夫郡(福島県福島市)
常盤(ときは):常緑
朱(あけ)
(483) 紅葉散る野原を分けて行く人は花ならぬまた錦きるべし
紅葉が舞う野原を歩く人は、花ではない錦をまとっていることでしょう。
Those walking through a field of falling autumn leaves are likely to be wearing a brocade that is not made of
flowers.
秋の末に、宝輪にこもりてよめる
(484) 大井川井堰によどむ水の色に秋深くなる程ぞ知らるる
大井川の堰によどむ水の色を見ると秋が深くなったことが分かります
The color of the stagnant water at the Oi
River dam indicates that autumn has arrived.
宝輪(ほふりん):洛西・嵯峨の法輪寺
大井川:桂川の上流
井堰(いせき)
(485) 小倉山麓に秋の色はあれや梢の錦風にたたれて
小倉山の麓に秋の色はあるだろうか。梢の錦が風に断たたれている
Are there any autumn colors at the foot of
Mt. Ogura? The brocade of the treetops is cut off by the wind.
(486) わがものと秋の梢を思ふかな小倉の里に家居せしより
小倉の里の家に居ると秋の梢をわがものと思ってしまいます
When I'm at home in Ogura Village, I
feel like the autumn treetops are my own.
家居(いへゐ)
(487) 山里は秋の末にぞ思ひしる悲しかりけり木枯らしの風
秋の末になると山里では木の葉を枯らす風が吹いて悲しさを思い知ります
At the end of autumn, the wind blows through the mountain villages, wilting the leaves and bringing sadness to
me.
(488) 暮れはつる秋の形見にしばし見ん紅葉散らすな木枯の風
秋も終わりに近づき、秋の名残に紅葉をしばし眺めましょう。風よ紅葉を散らさないでおくれ。
As autumn draws to a close, let's take a moment to look at the autumn leaves. Wind, please don't scatter the
leaves.
(489) 秋暮るる月なみ分くるやまがつの心うらやむ今日の夕暮れ
秋も深まり、季節の変わりようが分かる猟師たちを心からうらやましく思う今日の夕暮れです
It's late autumn, and today's evening I
feel truly envious of hunters who can sense the change of seasons.
月なみ:月の移り変わり。
やまがつ:猟師や樵など、山で仕事をする人。
夜もすがら秋を惜しむ
(490) 惜しめども鐘の音さへかはるかな霜にや露を結びかぬらん
秋の去りゆくことを惜しむが、鐘の音さえも変わってしまったようだ。霜には秋の露は付かないだろう。
I lament the leaving of autumn, but even
the sound of the bells seems to has changed. The autumn dew will not be put on
the frost.
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